五浦海岸で(2)タイムマシン(第二章)

2009年01月23日

タイムマシン(第一章)


タイムマシン(第一章)


 仕事から帰ってきて、郵便受けを覗くと一通の大きな封筒が入っていた。

 ちらっと封筒の裏を見たが、差出人に心当たりがない。

 “誰だろう?"

 どうせ、どこかの業者のDMかな、などと思いながら玄関の鍵を開けた。

 中に入り、扉の鍵をかけ、廊下のスイッチを点ける。

 靴を脱ぐ前にもう一度、その封筒に目をやった。

 女性の名前で、きれいな字だ。

 住所は・・・。

 ん?

 北海道函館市・・・?

 どうもDMではないらしい。

 函館?

 僕の生まれ育った町は北海道ではあるが、函館ではなく小樽である。

 靴を脱ぎながら、もう一度差出人の・・・。

 あれ?

 もしかして・・・。

 廊下を進み、リビングの扉を開けるときにはもしかしてという曖昧な思いから、いや、あいつだの確信へと変わる。



 あいつ・・・とは、幼稚園・小学校・中学校を共に過ごして来たY子

 僕とY子は小・中学校で一度たりとも別のクラスになったことがない。

 つまり、ずっと一緒のクラスで過ごして来た仲である。

 しかも何度も2人で学級委員に選ばれ、中学時代は生徒会でも議長と副議長の間柄。

 ときには2人の仲を誤解されてしまうほど、結構仲良しだったように思う。

 彼女は正義感溢れ、クラスメイトからも絶大な信頼を受けていたとも思う。

 彼女と僕は中学校を挟んで隣町に住んでいたのだが、それでも多くの仲間たちとよく一緒に遊んでいたものだ。

 田舎町に住んでいたにもかかわらず、男子と女子が仲良く、遊ぶ機会が多かったのはきっと彼女の気配りがあったからに違いない。

 2人とも中学時代は深夜放送が大好きで、ローカル番組のパーソナリティの話題でよく盛り上がっていた。

 精神的にはまだまだ子供だったが、深夜放送を聞くようになると二人とも何だか大人の仲間入りをしたような、そんなあまずっぱい時代を過ごしていた。







6db7e6cd.jpg

【空を見上げて】







 中学生の僕は、すでにその頃から自分の人生設計を立てていて、高校を卒業したらこの町を出て東京の大学に行くことも決めていた。

 そのことを打ち明けていたのは唯一Y子だけだったし、Y子はいつもその応援をしてくれていた。

 そんなY子と会わなくなったのは、高校進学後、まもなくのことだ。

 僕は僕で勉強と部活動で忙しかったし、やはり高校の仲間との付き合いが比重を占めていた。

 もちろん、別の高校に進学したY子もそうだっただろう。

 高校時代に1度、いや2度ほどクラス会を開いたときに僕とY子が幹事を任されたのが最後だったような気がする。

 大学時代にも中学のクラス会の誘いがあったが、タイミングが合わず、不参加した僕はだんだんと故郷の仲間たちとも疎遠になっていってしまった。



 もちろんその頃は携帯電話などもなく、連絡を密に取るとか、メールのやりとりなどもない時代だ。

 社会に出てから、苦しいことに直面したとき、やはり故郷の楽しかった時代を振り返り、何度も田舎に戻ろうって思った時期もあった。

 大自然の中で泥だらけになって遊んだあの頃・・・あの町



 多くの仲間たちと海辺に出かけ、貝やウニをいっぱい取って、焚き火をしながら食べた短い・・・。

 仲間たちと山に栗拾いに出かけ、真っ暗になってから帰ってきて、親に怒られた・・・。

 近くの原っぱで要塞まがいの雪の壁(かなり本格的)を作り、毎日雪合戦に明け暮れた寒い・・・。

 誰も踏み入れたことのない山の中で、ふきのとうやねこやなぎを見つけて、いつの間にか自分の知識になっていった雪解けの・・・。



 たわいもないひとつひとつの遊びは、今、思うと自然の中で生活していたことが、実は大きな人間形成の場だったりしたのだろうか。

 子供は自然の中で、そして子供同士の世界の中で多くのことを学び、成長するもの。

 そういえば大人になってから何度も何度もそんな環境にもう一度戻れたなら・・・と淡い思いを抱きながら生きてきた。

 あれから何年・・・いや、何十年も経った今・・・。

 突然の手紙が届いたのだ。






[1年前の今日のブログを見る]

[2年前の今日のブログを見る]

[3年前の今日のブログを見る]

[4年前の今日のブログを見る]


at 23:36│Comments(2) 「青春」編 

この記事へのコメント

1. Posted by しらくも   2009年01月24日 09:41
若い頃の友はいいですね、成功したやつ落ちこぼれたやつ、それぞれの人生、私は幼稚園、小学校同期の者30人ぐらいで暇になった60歳から年に数回同窓会を開いています、今は爺婆ですがその時は子供になって楽しいものです、若い頃の友は損得無しで付き合えるので大事にしたいものですね。
2. Posted by しゅんち→しらくもさん   2009年01月27日 02:23
 どもども~。
 ご無沙汰しています。
 そうですね~、若い頃に出会った友人というのは未だに気兼ねなく、それでいて多くの出来事を共有し、真剣にお互いを考えてくれる数少ない本当の仲間という気がします。
 しかし、ここ最近は僕の方がついつい疎遠になりがちで、この手紙(Y子からの)がこれからどんな役割を持つのか、真剣に考えているところです。
 お楽しみに~(あはっ、ドラマではないんですけどね)。
 ではでは~。

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
五浦海岸で(2)タイムマシン(第二章)