おいしい野菜たち蝉の声

2009年07月30日

人生の交差点

 帰宅時の電車内での出来事

 新宿から乗るJR線ではいつものように満員電車なのだが、池袋を過ぎた頃、突然僕の隣にいた青年が、いきなり僕の鎖骨の辺りを手の甲で叩いてきた。

 その青年は新宿から一緒だった気もするが、池袋から乗って来たような気もする。

 お互い、肩を並べた状態で立っていたが、特にぶつかったわけでもなく、あまりにも唐突な出来事で、その青年をにらみ返してみると・・・。

 青年も僕を見ている。

(なんだ、こいつ。)

 突然僕を叩くものだから、当たり前のように睨んだのだが、彼は僕の顔から視線をずらすことはない。

 しかも、周りの雰囲気も気まずい(感じがした)。

 髪の毛は茶髪の今風のチャラ男(ってやつかな)。

 見覚えのある顔ではない・・・、

 ・・・ような気がしたが、相手は敵意を持った目をしていたわけではない。

 それでも数秒間はお互いに睨み合い(少なくとも僕は睨んでいた)、それがいつの間にか・・・。

 どこかで見た顔だ・・・。

 という気持ちに変化する。

 ん?

 僕の過去に出逢った人々を一瞬のうちに並べながら、その中で最も似ている人間の名前を思い出そうとしている。

 そう、彼は僕の水泳指導の教え子のN君に最も近い顔立ちだったので、

「N君・・・?」

と声をかけると、

「はい。」

と笑顔で答えてくれた。

「何だよ~、いきなり人の胸ぐらを叩いてくるから、喧嘩売ってるのかぁって・・・(笑い声で)。」

「いやぁ、まさか・・・、たまたまチラッと見たら、僕の隣にいたもんで。」

 人生とは不思議なものだ

 たまたま彼がチラッと見たから、僕と再会したのだが・・・、見なかったらお互いに気がつくこともなく、何事もない状態でその日が過ぎていただろう。

 こんなことは実は日常茶飯事なのかもしれない。



 N君は幼稚園時代から中学3年生まで、スイミングクラブに通い、その大半を僕のクラス(選手クラス)で過ごしてきたひとり。

 約10年間、一緒に過ごしてきた仲である。







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【水たまり】







 その上、小学1年生のときからスキースクールでも僕のグループで技術はトップクラス。

 ところが突然、中学3年生のときに、進路について僕に話してきたのは・・・。

「日本の高校には行きたくないのでイギリスに留学することにしました。」

って・・・。

 僕にしてみれば、彼は際立って英語の語学力があるわけではないと思っていたのだが、イギリス留学は彼の固い意思のようで、彼の人生観に驚いたことを今でも忘れない。

 そして、年に1度ペースで帰国した際も必ず僕に会いに来て、イギリスでの生活などを報告してくれたのだが、その頃に僕の体調も芳しくなくなり、仕事を休職。

 それ以来、彼とは会うこともなくなってしまっていた。

 今、彼は大学4年生。

 高校時代をイギリスで過ごし、帰国後は日本の大学で勉強しているとのこと。



 幼い頃から、ずっと僕の指導を受けてきたN君だが、そのころはどちらかというとぽっちゃり型だったのに、久しぶりの再会で見た彼は僕より細身になっていたので、思い出すのに時間がかかってしまったのは言うまでもない。

 彼のご両親も全面的に僕に信頼を寄せてくれていた。

「お父さん、お母さんは元気か?」

と訪ねると、急に曇った顔をして、

「父は4年前に亡くなりました。」

と・・・。

 たしか彼の父親は自営業を営んでいたはず。

 笑顔の耐えないお父さんで、ぼくより年上なのに腰の低い方だった。

 心筋梗塞であっという間に亡くなったそうだが、彼の成長を楽しみにしていたのは母親よりも父親だと感じるほど、僕の目にはそう映っていた。

 電車内では過去の思い出やら現在の生活などを話してくれたN君だが、やっぱりいつまで経っても僕の中では可愛い教え子の一人(たとえチャラ男であっても・・・笑)。

 別れ際にメール交換をしながら、

「今度、酒でも飲むか。」

と言うと、

「弱いですけど、飲みましょう。」

と一人前の返事(笑)。

 最後に、

「今日家に帰ったら、お母さんにBIGニュースだね。」

と言うと、小さくうなずくN君の顔はまるで小学生時代の顔に戻っていたような気がした。







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at 23:33│Comments(2) 「生活」編 

この記事へのコメント

1. Posted by 茶々   2009年08月01日 07:17
ドラマのような再会。
ほのぼのとしました。
2. Posted by しゅんち→茶々さん   2009年08月03日 09:34
 どもども~。
 長い期間、数え切れないほどの子供たちと接してきていたので、こんな再会も実は1回や2回ではないんです。
 でも、そのほとんどは向こう(子供たち)が気づいてくれているのですが、それもそのはず。
 僕の脳裏には小さかったときの彼らしかインプットされてませんから、大人になった彼らを見つけるのは至難のワザなんですよね~。
 いつ、どこで見られているのか、ちょっと恐いですね~。
 ではでは~。

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